有田有紀 個展「人形の家」—自己と他者の境界を探る現代の寓話




有田有紀 個展「人形の家」—自己と他者の境界を探る現代の寓話
本展は、現代社会における個人のアイデンティティと、それが帰属する「家」という概念に深く切り込む、示唆に富んだインスタレーションです。
展覧会のタイトル「人形の家」(A Doll's House)は、Ibsenの古典戯曲を想起させますが、有田はそこからさらに踏み込み、現代的な問いを投げかけます。公開されたステートメント「Clothes are a new identity. Home is a feudal mindset. "Get dressed and leave home."」(「服は新たなアイデンティティ。家は封建的な精神。服を着て家を出よ。」)は、消費社会における自己表現としての「服」と、因習に囚われた「家」という場所の対比を明確に示しています。これは、現代美術がしばしば探求するテーマである、自己の再構築、解放、そして固定化された価値観からの脱却を強く意識させるものです。
会場デザインを手がけるのは、有田有紀が主宰するYOUKI SUN ART WORKS。空間全体が、作品の一部として機能するインスタレーション。草木染めには蘭染屋、音デザインには松本和史、そして「人形」の制作には奥村千代子という、多岐にわたる分野のクリエイターが参加することで、視覚、聴覚、そして触覚に訴えかける複合的な体験が創出されるでしょう。これにより、来場者は単に作品を鑑賞するだけでなく、展示空間そのものに没入し、有田が提示する概念を身体的に感受することになります。
本展は、現代における「ホーム」の概念、ジェンダー、そして個人が社会の中でいかに自己を確立していくかという普遍的な問いを、美術のプリズムを通して問い直す試みです。無料入場という開かれた形式は、より多くの人々が現代美術との対話に参加する機会を提供します。
期間:8月14日(木)-8月15日(金)
時間:8:30ー17:30 入場無料
場所:長﨑次郎喫茶室1階 ギャラリー静観堂
有田 有紀/YUKI ARITA
熊本県出身。2016年 熊本地震以降はテーマに「生活」というキーワードを 加えて、熊本県八代市千丁町のい草を使用した「藺染(IZOME /いぞめ)」の作品の発表を始める。染織という伝統技法を現代的な思想と融合させることで、地域資源を用いた新しいアートの可能性を提示している。障がいの有無を問わず参加できる草木染め体験教室の開催により、インクルーシブな社会の実現を目指している。
長崎次郎喫茶室 / Nagasakijirokissashitsu
熊本県熊本市中央区新町4丁目1-19 / 4-1-19, Kumamoto, Chuo-ku, Kumamoto, Japan